今年も3月11日がやって来た。あの東日本大震災が起きたのは13年前、被災者の上にもそれだけの時間がたった。
たいへんな災害で多くの人が被害を受け、心に深い傷を負った人も少なくない。しかし人間には、その傷を癒やし、さらに成長するという力が備わっている。心理学では「心的外傷後成長」とも呼ばれる心の働きだ。
私の知人にも、見事にトラウマを自らの成長につなげた人がいる。
大震災が起きて約10日後に被災地に出向いた私は、仙台市で20代後半の青年・荒川洋平さんと知り合った。母と兄が津波にのまれて行方不明というその青年は、3月15日から実家のあった宮城県名取市閖上(ゆりあげ)地区の状況をブログで発信していた。ブログの名前は、「名取市閖上復興支援のブログ」。発災直後から、復興を信じて疑わないという気持ちを込めたかったのだろう。
その後、ブログは名取市の情報発信の拠点のようになり、多くの人が閲覧するようになっていった。荒川さんの家族はその後、死亡が確認されたが、悲しみに暮れながらも地元の様子や必要な情報をブログで発信し続けた。私はときどき彼とやりとりを続けていたのだが、次第に閖上地区のイベントやスポー...