お客さんからいただく質問の中で、一番と言って良いほど聞かれることの多いのが「いつ、どうやってその日の演目を決めているんですか?」というものだ。
例えば、ミュージシャンや歌い手さんのライブ、コンサートでは、前もってセットリストを組んで演奏する。中にはアドリブで、アカペラで歌ったりセッションしたり、またお客さんからリクエストを受けて歌うこともあるかもしれないが、大抵は開演前には決まっているだろう。
「お笑い」と称される漫才やコントの方々も、出番前には決めていることが大半だと思う。たまにご一緒することがあるが、ほとんどの皆さんが、出番前にコンビで舞台の袖や楽屋でおさらい稽古をしている。
そんな中、落語家はほとんどが、出番が来て高座に上がってしゃべりながら、演目を決めるのだ。別に落語家だけやる気がなくていいかげん、というわけでは決してない! 多分。そうであってほしい…。
これには大きく二つの理由が挙げられる。
一つ目は、先ほど挙げたバンド演奏やコンビ芸の人たちとの大きな違いで、われわれは高座では1人だから。誰かと何かを事前に合わす必要がないのだ。なので出番の寸前、あるいはマクラ(噺に入る前の...