【小川糸 一筆申し上げます】キラキラ光る雨氷 自然の美しさと過酷さを思う

  •  小川糸
  •  小川糸さん撮影

 標高1600メートルの山小屋にも、ようやく遅い春が巡ってきました。新緑が芽吹き始めたのは、ゴールデンウイークを過ぎた頃。日に日に緑が濃くなっていく様を、私は今、固唾(かたず)をのんで見守っています。

 この冬は、とても長く感じました。2月は、ほぼずっと雪景色を見ていた印象です。人生で初めて、雨氷という自然現象にも立ち会いました。これは本当に本当に美しかったです。今思い出すだけでも、うっとりとした気持ちになります。まるで、おとぎの国に迷い込んだような非日常の光景でした。

 その日は一晩中、氷点下以下の冷たい雨が絶え間なく降り続きました。その結果、木々の枝という枝が透明な氷でコーティングされたのです。これほどまでの雨氷が見られるのは、何十年ぶりとのこと。それからの数日間、森はキラキラと光る氷の世界となりました。太陽の光が当たると、プリズムのように輝きます。

 美しい光景を見せてくれた雨氷でしたが、枝という枝が氷で覆われたため、氷の重さに耐えきれずに折れてしまう枝が続出しました。中には、どう見ても折れそうにない立派な大木が、バキッと幹の半ばで真っ二つに折れてしまいました。

 無残な姿に、改めて自然...

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