被写体の「明日の幸せ」をそっと願って撮り続け、半世紀を超えた写真家のハービー・山口さんが、著名人を活写したカットを紹介。撮影秘話や心の交流を振り返る連載の第6回。
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1972年のデビュー以来、シンガー・ソングライターとして日本のポップスを切り開いてきた松任谷由実。懐かしさと切なさあふれるメロディーに、おしゃれで憧れを詰め込んだような世界観が広がる。
横浜のカフェレストラン「ドルフィン」が舞台の「海を見ていた午後」(74年)は、英国から一時帰国した際に聴いて、心をつかまれた楽曲だ。
写真家の視点で分析してみると〈遠く三浦岬も見える〉は望遠レンズからの景色だ。〈ソーダ水の中を 貨物船がとおる〉は、マクロレンズで接写した光景。〈テーブルごしに〉見えるあなたは広角レンズの視界といえる。レンズ3種を駆使したイメージが脳内に投影され、奥深い楽曲だと思う。
写真は、99~2000年開催のツアー「FROZEN ROSES」に向けたパンフレット撮影での1こまだ。「ユーミンワールドへようこそ」とほほ笑んでいるようで、シャッターを切る私の心はほぐれた。
気さくな上、プロ意識が実に高い人だ。...