今世紀初頭のことだった。当時は学生で、自宅のテレビで母とニュースを見ていると、日本の少子化進行とそれに伴う経済低迷を予測する特集が流れた。母に「日本、大丈夫?」と聞くと、「日本は大丈夫」ときっぱり答えた。日本経済の力を疑うなど不遜だと言わんばかり。戦後の日本の輝きを見てきた母にとって、日本の経済成長は神話化していた。
だが、統計を基にした合理的な予測を放置しておけば必ず現実化する。その後、高齢者が若年層よりも多い逆三角形の人口ピラミッドは労働力の減少、社会保険料の負担増大、デフレマインドの醸成と多くの弊害を生み、日本の国内総生産(GDP)は2023年に人口約8400万人のドイツに抜かれて世界4位になった。
今度は隣国にお鉢が回ってきた。中国は約40年続いた「一人っ子政策」を15年末に撤廃し、第2子を持つことを認めた。21年には第3子の出産を認めたものの、出生数は17年以降減少が続いている。国連は猛烈に進む少子化で、中国の人口(24年、約14億人)が今世紀末には約5億人に減る可能性があるとみている。
「中国は大丈夫」。長年の高度成長に酔った中国人はそう言うだろう。しかし必要なのは妄信で...