師匠の六代目三遊亭円楽は口酸っぱく「芸は盗め」と言った。
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これは人のネタを盗むのではなく、声、間を盗めということ。落語って大体の内容が決まってる。ところが誰がやるかによって価値が変わってくるんです。その価値とは声であり間なんです。
前座時分、師匠から教わったはなしを高座でかけてみるとびっくりするくらいウケない。一言一句忠実に覚えたはずなのに。面白いかどうかは台本の良しあしではなく、誰がしゃべるかで決まるんです。
師匠は「楽屋でしゃべってるんだったら、袖に行ってたくさん落語を聞け」と常々おっしゃいました。「いいか、楽花生。売れてる人だけ聞くな。そうでない人も聞け。売れてる人はなぜ売れているのか、この人はなぜ売れてないのかを考えろ。それが分かったやつから売れていく」
落語を覚えるときも聞くことが大事。「書いて覚えるな。高座で原稿用紙が出てきてしまう」と言われました。「耳で覚えると声の高低、早くしゃべるところゆっくりしゃべるところ、押すのか引くのか、たくさんの情報が入ってくる」
今考えてみると、間近で師匠の呼吸を盗ませてもらってたんですよね。当時のワタクシ、全く分かっておりま...