「人は仕事があれば、再犯しない。」
この言葉を信じ、実践してきた人がいる。その人、小沢輝真さんは札幌の北洋建設という建設会社の社長だったが、昨年9月に49歳の若さで脊髄小脳変性症という難病のため死去した。北洋建設は、これまで全国の刑務所や少年院から出所、退院した人をおよそ600人雇用してきたのだ。
「出所者雇用」を始めたのは、北洋建設の創業者である小沢さんの父親だ。小沢さんもその遺志を引き継ぎ、全国の刑務所を回って出所予定の人たちの“リクルート”に励んできた。37歳で難病を発症して「余命10年」と宣告され、からだの自由がきかなくなってからも、車椅子に乗って精力的に動き、講演を行ったり著書を出版したりするなど情熱は衰えなかった。
しかし、元受刑者を雇用しても、8、9割は半年以内に姿を消してしまうのだという。それについても小沢さんは「皆が皆、建設業に向いているわけではないですからね」と言い、「大切なのは許すこと」として失踪した社員の再雇用まで認めていた。
最近の犯罪心理学では、犯罪に手を染める人のうちかなりの割合が養育放棄、虐待などの劣悪な環境で幼小児期をすごしてきた、というデータもある...