昨年12月、ベトナム・ホーチミン市の都市鉄道(メトロ)1号線の開業式会場で、プロジェクト開始当初からいる旧知の日本人エンジニアを見かけた。式典前の様子を写真に撮ろうとしている彼の背中に、ベトナム人の男性が「ワッ!」と抱き付いた。エンジニアは驚いた表情で振り返ると、破顔して今度は自分から抱き締めた。
都市鉄道は首都ハノイの2路線に次ぎ同国で3路線目だが、地下鉄が開通するのは初めて。総延長は19・7キロ(地下は2・5キロ)で、市中心部と北東部郊外を結ぶ。2000年代半ばの計画当初から日本の官民が支援しており、円借款による資金支援だけでなく、設計から施工、運営会社の設立などを一貫して支えた。駅舎や車両など至る所に日本の技術の粋がちりばめられている。ほぼ20年にわたった一大インフラの建設プロジェクトは、いくつもの工事の集合体だ。
プロジェクトの節目節目で無数の出会いと別れがあったのだろう。開業式は、ホーチミン初のメトロ実現に向けて力を合わせた日越の戦友たちにとって大団円の場でもあった。あちこちで再会を喜び、写真に収まる姿が見られた。
そのエンジニアに声をかけ祝意を伝えると「完成したなんて、ま...