東京都江東区の門前仲町は、現在も神社仏閣が多く下町の雰囲気が残る街。日本全国を歩いて、日本初の本格的な地図「大日本沿海輿地全図」を作製した伊能忠敬ゆかりの地を訪ねた。(共同通信=近藤誠)
門前仲町駅の北西には「伊能忠敬住居跡」と書かれた標柱が立っている。現在の千葉県香取市で商家として財をなした忠敬は、49歳で隠居すると江戸に出てこの地に居を構え、天文学を学んだ。正確に測量を行うため、一定の歩幅で歩く練習をしていたのは、目の前の通りかもしれない。
忠敬は測量の旅に出かける前には内弟子と従者を率いて、近くの富岡八幡宮で安全を祈願していた。境内には旅装束姿で今にも歩き出しそうな忠敬の像がある。右手に持っているのは、方位磁石を乗せた「わんか羅針」と呼んだつえで、つえが傾いても磁石が水平を保てるようになっている。地球1周に匹敵する距離を歩いたとされる健脚にあやかって、元気に取材を続けたいと念じた。
富岡八幡宮は約400年の歴史を誇る。毎年8月の深川八幡祭りが「水かけ祭り」として親しまれている他、相撲と縁が深いことでも知られている。1684年から約100年間、勧進相撲が開催されて現在の大相撲の礎...