【逍遥の記(14)】弾圧の中で輝き、消えていったプロレタリア文化運動

 時代のうねり、熱気を伝える日本近代文学館の展覧会

  •  「プロレタリア文化運動の光芒」の展示風景
  •  「種蒔く人」帝都震災号外(1923年10月、日本近代文学館蔵)
  •  小林多喜二の遺骸を囲む同志たち(貴司山治撮影、1933年、個人蔵)
  •  小林多喜二「転形期の人々」断片稿(1931年、日本近代文学館蔵)

 ジョージ・オーウェルの「一九八四年」やレイ・ブラッドベリの「華氏451度」、桐野夏生の「日没」といったディストピア小説にお決まりのように出てくるのは思想・言論の弾圧である。新聞、雑誌、書籍が検閲を受け、書き換えを命じられ、最悪、発禁処分となる。自由にものを考え、表現するという人権の核を奪われる悪夢のような時代が、かつて日本にもあった。

 この展覧会の会場に来ると、その理不尽さへの恐怖と怒りを追体験する。本展の主題は、そうした弾圧を受けた側のプロレタリア文化運動である。命を脅かされてもなお輝き、やがて消えていった芸術運動。それは熱く、激しかった。

 東京・駒場の日本近代文学館で始まった展覧会「プロレタリア文化運動の光芒」(11月25日まで)は、文学が演劇や美術などと連動し、市民を巻き込んで時代のうねりとなっていたことを示している。背景には貧富の差の拡大があり、植民地主義に駆られて戦争に向かう国の動きがあった。

 ■文学館の原点

 「とにかく、たくさんあるんですよ、資料が」「この館が持っているプロレタリア文学関係の資料は本当にすごい」

 本展の編集委員は林淑美、中川成美、村田裕和、内藤由直の4人。...

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