東京・根岸周辺には、俳人正岡子規(1867~1902年)が晩年の8年余りを過ごした「子規庵」をはじめ、ゆかりの深い地が点在する。子規をしのんで巡った。(共同通信=鈴木賢)
JR鶯谷駅北口から5分ほど歩くと、木造平屋建ての子規庵に着いた。子規庵保存会によると、45年に戦災で焼失したが5年後、高弟・寒川鼠骨らの尽力でかつての姿に再建されたという。
6畳間には文机(複製)が置かれている。病で左足を伸ばせなかったため、立て膝を入れる部分がくりぬかれている。子規に倣い、膝を立てて机の前に座った。外を眺めると、子規が「小園」と呼んで愛した庭のヘチマ棚の隙間から木漏れ日が降り注ぎ、ケイトウの花が風に吹かれ揺れていた。
子規庵は、日記「仰臥漫録(ぎょうがまんろく)」に記された献立を再現した「食べもの帖」を公開している。ココア入りの牛乳やブドウ、おはぎ、塩せんべいなどさまざまな食べ物が写真付きで紹介され、病の床に伏しても食欲旺盛だったことがうかがえる。
子規庵保存会の田浦徹さんは「来られる方には子規がここで亡くなったというよりもむしろ、8年余り生きたことを実感してほしいです」と話す。
鶯谷駅前にある元...