逍遥の記【15】芸術の一回性に触れ「わたしたち」を問い直す

 連日変化し続ける「さいたま国際芸術祭2023」

  •  「さいたま国際芸術祭2023」のメイン会場風景。透明の板による通路が張り巡らされている
  •  今村源さんの作品「うらにムカウ」
  •  透明な板の向こうに展示されている肖像写真。「ポートレイト・プロジェクト」の作品は連日、展示替えする。右は担当した川島拓人さん
  •  「BODY PRINT ACTION 2023 わたしとあなた」について説明する浅見俊哉さん

 「いつ、どこで、誰と、この芸術祭を見たのか。それによって芸術祭の経験が大きく変わってしまう、そんな芸術祭のあり方を考えました」

 「さいたま国際芸術祭2023」のメディア向け説明会で、ディレクターの南川憲二の言葉にハッとした。コンサートや演劇であれば、いつどこで見たかということが非常に重要で、作品との出会いは一期一会だということは身にしみて知っている。けれど、美術展はいつ見に行っても同じだと思っていた。芸術祭はそうではなかったのか。会場が広いから、どこを回って何を見たかは人によって違うはずだが、どこか美術展の延長のように考えていたのかもしれない。南川は続けて、こうも言った。

 「その日、その時、そこにいることを選んだ鑑賞者自身の行動、行為によって見え方が生まれていってしまう。一人一人に固有の鑑賞体験が生まれる。そんな芸術祭にしたい」

 「一回性」という言葉が頭に浮かんだ。それは芸術の原点でもある。

 ならば、あえて書こう。それは、10月6日金曜日午後のことだった。私は「さいたま国際芸術祭2023」のメイン会場(旧市民会館おおみや)に行ってディレクターらの説明を聞き、そのあとの内覧会に参加した...

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