九州の海の男、屋台に転じ60年 仙台「最後の一軒」守る89歳・内田菊治さんインタビュー

  •  屋台「大分軒」で店主・内田菊治さんを交えて笑い合う客ら=11月21日、仙台市
  •  JRあおば通駅前の歩道脇にたたずむ屋台「大分軒」。のれんはわざと裏返し=11月21日、仙台市
  •  若き日の内田菊治さん=本人提供、撮影年月日不明
  •  おでんの具材に手を伸ばす内田菊治さん=11月21日、仙台市
  •  自宅の壁に張った絵や写真を紹介する内田菊治さん=12月15日撮影、仙台市

 仕事帰りの会社員が慌ただしく行き交う、JR仙台駅近くのビル街の路上。日暮れとともに「大分軒」と書かれた提灯(ちょうちん)に、ぽつんと明かりがともる。仙台市でたった一軒となった屋台を約60年にわたり営むのは、大分県臼杵市出身の内田菊治さん(89)だ。10人ほどが入る屋台からは、九州の甘めの醤油(しょうゆ)で味付けしたおでんの香りが漂う。「誰かにもたれかかって生きている」と話す内田さんは、客と支え合いながら歩んできた。北の街で愛され続ける小さな店を訪ね、創業時の苦労や東日本大震災の経験、遠く離れた古里への思いなどを聞いた。

 ▽歩道脇の提灯

 道行く人が足を止め、気になるそぶりで歩道脇の屋台を眺める。のれんや戸板で囲まれ、外からは様子をうかがうことができない。恐る恐るのれんをくぐると、すでに7、8人の客でにぎわっていた。おでんの具材をよそっていた内田さんと目が合う。「はい、詰めて」。しゃきっとした声で内田さんが呼びかけ、1人分が座るスペースを空けてくれた。

 隣の席になった見ず知らずの女性客が「最初のおでんの注文は3品。お酒は2種類、瓶ビールと日本酒ね」と、店のルールを親切に教えてくれる。

 屋...

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