現代の人たちは多かれ少なかれ、医療の恩恵を受けて生きている。カゼや打撲などで一時的に手当てを受ける人もいるが、高齢になればなるほど高血圧症、糖尿病などの慢性疾患で服薬が欠かせない人が増える。隔日で人工透析を受けることで生命を維持している人や精神疾患の薬がないと不安定に陥る人もいるだろう。
今回の能登半島地震のような大きな災害が起き、さらに孤立地区がいくつもできてしまうと、多くの人が医療を中断しなければならない状況に陥る。その中には、薬が切れ、病院に行けないことが命の問題に直結する人も少なくない。
ただ、これは「能登半島だから」というわけではないだろう。地震、豪雨、豪雪などで道路や鉄路が使えなくなって孤立地区になる場合だけではなく、都会のタワーマンションでも停電になってエレベーターが動かなくなると、上層階の人は身動きが取れなくなるかもしれない。私たちの便利な生活は、意外に脆弱(ぜいじゃく)な基盤の上に成り立っているのだ。
また、コロナ禍で一躍、注目を集めて普及したオンライン診療も、そこでできることはきわめて限定的だ。注射や傷の処置、もちろん手術などは対面でなければ行えないし、何より薬は...