令和6年1月21日、寄席・演芸界においてかけがえのない芸人、紙切りの三代目林家正楽師匠が天国へ旅立たれた。
東京都内に数軒あり、年中ほぼ休みなく昼夜で営業している寄席には、色物といって、主に落語と落語の間に挟まれて落語以外の芸(紙切り、曲芸、奇術、漫才、コントなど)を披露する芸人さんが登場する。
落語をメインに据えている寄席で色物の師匠・先生方は、想像力を使い頭を回転させてお疲れ気味のお客さんを、親しみやすい、見せる芸で楽しませたり、時には時間調整をしてくれたり、ととても大事な役割を担ってくれている。正楽師匠は、その寄席の公演の中でも主に、色物さんにとって一番大事な出番、つまり主任(トリ)の前に、ほぼ休みなく毎日のように出演し、文字通り寄席にはなくてはならない大切な存在だった。
私は、小さい頃に親父の仕事について行って、何度か遊んでもらった記憶がある。楽屋の中で落語に興味がない私に話しかけてくださり、いろいろなものを切ってくれた。
「今、何が好き?仮面ライダー? あ、そう」。言葉少なに「ふぅ~ん」と言いながら、ささっと仮面ライダーの戦闘シーンを切って「はいよぉ~」とゆったりした口調で...