2019年、難病のALS(筋萎縮性側索硬化症)を患う女性に依頼され殺害した罪などに問われている医師の裁判員裁判で1日、検察側は懲役23年を求刑した。
その前に行われた被告人質問などでは、被告の医師は「女性の願いをかなえるために行ったこと」と主張、死に至る処置を行う間際に、女性が文字盤を使って被告に「『死なせて』とおっしゃっていた」「目に涙を浮かべてうれしそうにされていた」などとも話した。
一方、女性の父親は意見陳述(検察官による代読)で、「なぜ思いとどまるよう説得できなかったのか。心底恨みます」と述べたそうだ。
重い病で苦痛が強く、回復の見込みもない場合、医師は「鎮静」という手段を取ることがある。適切な鎮静では命が短くなることはないと言われるが、意識のレベルが下がり会話ができなくなることなどから、世の中には「これはゆっくりとした安楽死なのではないか」といった声もある。
しかし、「患者の死亡」を意図して行われる安楽死と、「死が早まることはできる限り避けたい」という気持ちを持ちながら苦痛を緩和する鎮静とは、それを行う医師にとってはまったく異なるものである。また、弁護側は「患者の自己決定権...