箱の中には、無限の世界が広がっている。約8年前、ボードゲームに魅了され、気付けば100個以上のゲームを所持するようになった。ステイホームと言われても全く苦ではなかったのは、ボードゲームでいくつもの文化や人生を旅することができたからかもしれない。
例えば、「マラケシュ」はモロッコの市場を舞台にした陣取りゲーム。商人になりきって、手のひらサイズのじゅうたんをボードに広げる。「モダンアート」ではギャラリーのオーナーになり、まだ価値がついていないアートを買い付ける。「ミステリウム」は幽霊と霊能力者に分かれ、協力して殺人事件を解決していく。「枯山水」は徳を積みながら、より美しい日本庭園を作ったプレーヤーが勝ちだ。
あるときは遊園地の経営者になったり、カメになったり、潜水士になったりする。名作ゲームにはまるきりファンタジーとは思えないリアリティーがあり、世界観に没入することができる。ゲームのモデルとなっている文化のエッセンスや美学がルールに凝縮されているからだ。友人や家族が見たことのないキャラクターを演じるのを観察するのも楽しい。この人、もしスパイとして生きていたらこんなに敏腕なんだ…だますのが...