アキ・カウリスマキ監督の6年ぶりの新作「枯れ葉」は、ストーリーも俳優の演技も映像も研ぎ澄まされていて隙がない。ファンにはおなじみの「パラダイスの夕暮れ」など、「労働者3部作」に連なる作品だ。
スーパーでレジや棚の整理をしていたアンサ(アルマ・ポウスティ)はある日、店側から冷たい扱いを受けて職を失う。町のカラオケの店で出会ったホラッパ(ユッシ・ヴァタネン)は、昼間でも酒を手放せず、工事現場の仕事を転々としている。
2人とも表情はほとんど変えない。だが心の中では互いに引かれ合う。カウリスマキの作品世界そのもので、見ているこちらはニヤリと表情を崩してしまった。ポピュラー音楽の多用、随所に忍び込ませたユーモアも、市井の人々の心情に光を当てる役割を果たしている。
孤独な2人の気持ちがすれ違い、関係はぎくしゃくしていて、もどかしさを覚えるが、その味付けが恋愛作品の個性であり、見る側の楽しみでもある。仰々しい演出を排した「枯れ葉」では、ホラッパを自宅に招いて食事をする場面で、アンサが奮発した小瓶のスパークリングのお酒が私は気になった。
この場面、グラスに注ぐ時の「シュワ-」というかすかな音が2度聞...