【逍遥の記(19)】「ここからは少し歩いてみるつもり」

 性暴力サバイバーによる写真集

  •  
  •  「Gazer」(2019年、マリア33歳、写真集「What Became Visible After STANDing Still その後 佇んで、見えたもの」より)
  •  「独り」(2022年、リーナ40歳、写真集「What Became Visible After STANDing Still その後 佇んで、見えたもの」より)
  •  「重荷」(2022年、大藪順子51歳、写真集「What Became Visible After STANDing Still その後 佇んで、見えたもの」より)

 表紙の写真に見入った。誰も乗っていない小舟が水の上に停留していて、水辺から土手の方に続く簡素な階段が写っている。舟を下りて、誰かがその階段を上がっていったのだろうか。水面には色とりどりの葉が浮いていて、空もうっすら映っている。両岸の草の緑色を基調とする穏やかな作品なのだが、明るい雰囲気というか、前向きな空気が伝わってくる。

 本を開いて確認した。この写真のタイトルは「ながいながい旅路」。キャプションにこう書かれていた。「乾いたあたたかい香り/ここからは/少し歩いてみるつもり」(2022年、マリア36歳)

 写真集「What Became Visible After STANDing Still その後 佇んで、見えたもの」。プロジェクト「STAND Stillー性暴力サバイバービジュアルボイス」の作品集だ。19年から23年までの5年にわたるワークショップの成果、86点が収録されている。

 ■佇む

 始まりは19年7月だった。フォトジャーナリストの大藪順子(おおやぶ・のぶこ)が横浜市内で、性暴力サバイバーを集めて写真のワークショップを開いた。集まったのは8人の女性たち。参加者は6回のワークショ...

残り 1708 文字
このページは会員限定コンテンツです。
会員登録すると続きをご覧いただけます。
無料会員に登録する
会員プランを見る
会員登録済みの方
この機能はプレミアム会員限定です。
クリップした記事でチェック!
あなただけのクリップした記事が作れます。
プレミアム会員に登録する ログインの方はこちら

トップニュース

同じカテゴリーの記事