美食をきめ細かに捉えるグルメジャーナリスト東龍さんが、今、東京で最も「旬」な7皿を紹介する連載、6皿目。
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日本でなじみのある外国料理として中国料理が挙げられるが、そのほとんどは塩の調味が命の広東料理。香りや刺激が豊かで、複雑な味わいを楽しめるのは四川料理だろう。
2023年1月、人形町にオープンした「中国菜 ARATA(アラタ)」では、名店で研さんを積んできた、福岡県飯塚市出身のシェフ中園健司さんの下、四川料理の醍醐味を体験できる。
コースが中心で(ランチ5500円~、ディナー8800円~)、抑揚のある料理がリズムよく提供される。コース全体を通して、スパイスの妙味と辛味の包容力が感じられるのだ。
バラエティーに富む料理の中で代表的な一皿となっているのが季節の魚介類を使った「サンラー茶わん蒸し」。旬の魚(写真はアイナメ)などを添えた一品で、酸味と辛味が高い閾値で重なり合い、心地よい刺激をつくり上げる。夏はハマグリやハモを、冬は三陸のカキをのせるという。
茶わん蒸しは適度に弾力がありながらもやわらかだ。あんをまとえば、なめらかでシルキーなテクスチャーとなる。
半年間漬け込...