美食をきめ細かに捉えるグルメジャーナリスト東龍さんが、今、東京で最も「旬」な7皿を紹介する連載、最後の7皿目。
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最も原始的な料理方法は火を用いた調理。原始的であるがゆえに、ガスや電気調理に比べて扱いが難しい。だが、じか火や熾火ならではの熱の入り方は、フライパンによる調理とは異なり、ワイルドな躍動感や力強い炎の香りが生まれる。
昨年1月にオープンした渋谷の「SHIZEN(シゼン)」は、「発酵と薪焼き」をコンセプトにした新しい日本料理のレストランだ。シェフの国居優さんは、神楽坂で有名な懐石料理店「懐石 小室」で修業した後、フランスの在ストラスブール日本総領事館で公邸料理人を務めた経歴を持つ。
ディナーの通常コース(1万9800円)では、さまざまな発酵を用いた料理と薪焼きの技を駆使した皿が展開される。メインディッシュは薪焼きした肉料理。牛肉から鹿肉やイノシシ肉など、日によって内容が異なる。
「牛薪焼き 発酵新玉ネギのソース」は、発酵飼料で肥育した「四万十麦酒牛」(高知)のサーロインを用いた一品だ。余分な脂がないので雑味が感じられず、しっかりとした食事と馥郁たる和牛香を有する...