私は5歳のとき、1970年開催の大阪万博を見に行った。ほとんど覚えていないのだが、それでも「太陽の塔」だけは脳裏にへばりついた。とにかくでかい。そして怖い。その異様さに脅えたのだ。制作者である岡本太郎自身が言うところの「ベラボーな」存在だった。それは今も大阪府吹田市の万博記念公園に居座り、人々を睥睨し続けている。
岡本の芸術精神を継ぎ、時代を創造する作家を顕彰する「TARO賞」が今年は「大豊作」と聞き、川崎市岡本太郎美術館(川崎市多摩区)に足を運んだ。「第27回岡本太郎現代芸術賞(TARO賞)展」(4月14日まで)には、応募621点の中から選ばれた最高賞の岡本太郎賞1点、次席の岡本敏子賞1点、そして特別賞10点を含む入選作22点が展示されている。特別賞10点というのは過去最多だ。昨年は太郎賞も敏子賞も「該当者なし」だったというから、今年の会場はさぞエネルギーに満ちているだろうと想像した。
その期待は裏切られなかった。会場は活気に満ち、インパクトのある作品が並んでいた。「これが今の私たち」と思えるような作品を紹介したい。
■空想の町
訪ねたのが休日だったせいもあるかもしれないが、子ども...