【逍遥の記(20)】時代を創造し「今の私たち」を問う

 岡本太郎の芸術精神を継ぐTARO賞入選作

  •  つんの「今日も『あなぐまち』で生きていく」(岡本太郎賞)
  •  三角瞳の「This is a life. This is our life」(岡本敏子賞)
  •  タツルハタヤマの「小鳥のさえずりを聞くとき、遠くで銃声が鳴り響いた」(特別賞)
  •  「ZENG HUIRU」の「BACK TO ME」(特別賞)
  •  「遅四グランプリ実行委員会」の「遅博2024―人類の進歩と遅延―」(入選)

 私は5歳のとき、1970年開催の大阪万博を見に行った。ほとんど覚えていないのだが、それでも「太陽の塔」だけは脳裏にへばりついた。とにかくでかい。そして怖い。その異様さに脅えたのだ。制作者である岡本太郎自身が言うところの「ベラボーな」存在だった。それは今も大阪府吹田市の万博記念公園に居座り、人々を睥睨し続けている。

 岡本の芸術精神を継ぎ、時代を創造する作家を顕彰する「TARO賞」が今年は「大豊作」と聞き、川崎市岡本太郎美術館(川崎市多摩区)に足を運んだ。「第27回岡本太郎現代芸術賞(TARO賞)展」(4月14日まで)には、応募621点の中から選ばれた最高賞の岡本太郎賞1点、次席の岡本敏子賞1点、そして特別賞10点を含む入選作22点が展示されている。特別賞10点というのは過去最多だ。昨年は太郎賞も敏子賞も「該当者なし」だったというから、今年の会場はさぞエネルギーに満ちているだろうと想像した。

 その期待は裏切られなかった。会場は活気に満ち、インパクトのある作品が並んでいた。「これが今の私たち」と思えるような作品を紹介したい。

 ■空想の町

 訪ねたのが休日だったせいもあるかもしれないが、子ども...

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