1966年に静岡県清水市(現静岡市)で一家4人を殺害したとして、強盗殺人などの罪で死刑が確定した事件。その後、自白は強制的なものだったとして無罪を訴えていた袴田巌さんだが、事件から57年がたった昨年3月、事態は大きく動いた。当時の証拠は捜査機関によってねつ造された可能性があるとし、東京高裁が裁判のやり直しを決定したのだ。
その後、再審公判が続いていたが、5月22日、検察は再び死刑を求刑した。体調がよくない袴田巌さんの代理として出廷した姉・ひで子さんは、意見陳述で「巌をどうか人間らしく過ごさせてくださいますようお願い申し上げます」と述べた。
裁判やり直しが決まった時点で、再審公判での有罪は難しいとも伝えられる中、なぜ検察は再び死刑を求刑したのか。
これまで、密室での取り調べにはいろいろな問題があることが指摘されてきたが、最も深刻なのは正常な心理を失って起こる「虚偽自白」だ。とくに、逮捕された人物が真犯人でなかった場合は、突然の勾留や情報が遮断された中での厳しい取り調べで判断能力を失い、とにかくこの場から逃れたいとの一心で、「『やりました』と言えば解放される」と思い込むことがある。また記...