「世界一速い男」の価値は5万ドルなのか?【五輪コラム】

プロが無償の奮闘、オリンピックに賞金は似合わない

  •  男子100メートルで優勝した米国のライルズ=パリ郊外(共同)
  •  男子100メートル決勝。8人全員が9秒台=パリ郊外(共同)
  •  男子100メートル準決勝を終えたサニブラウン・ハキーム。9秒96の3組4着で敗退した=パリ郊外(共同)
  •  インタビューに答える世界陸連のセバスチャン・コー会長(2024年1月)
  •  ゴルフ男子最終ラウンド、12番でティーショットを放つ松山英樹=パリ郊外(共同)

 大会第10日は興味深いプログラムが組まれていた。ハイライトは陸上男子100メートル決勝。ノア・ライルズ(米国)が9秒79で制し「世界一速い男」の称号を得た。ライルズは、世界陸連が今大会から実施の金メダリスト賞金5万ドル(約710万円)も獲得。史上初となる五輪での賞金支給は今回、陸上のほかボクシングでも実施される。同日は、通常のツアー大会で高額賞金を得ているゴルフの男子プロが、賞金のないメダルを目指して高度な技術を競った。果たして五輪に賞金は必要なのか。(共同通信=荻田則夫)

 ▽史上最高レベルの接戦

 いつの五輪でも陸上男子100メートルは大会のハイライトだ。雰囲気は世界選手権とも全く違う。選手も、スタンドも、テレビ観戦者も、緊張感はマックスだ。過去の大会からも10秒足らずのドラマが何本も語り継がれてきた。今回のまれにみる大激戦も多くの人の記憶に残るレースになった。

 準決勝で日本のサニブラウン・ハキームが9秒96の自己ベストを記録しても、決勝に進出できなかった。世界陸連によると、9秒台を出しながら準決勝で落選するのは史上初めてという。超ハイレベルの戦いは決勝でも続き、2位との差は千分の5...

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