五輪アスリートは人類の可能性を広げる“宇宙飛行士”

  •  茂木健一郎さん
  •  パリ五輪の体操女子個人総合で金メダルを獲得し、笑顔を見せる米国のシモーン・バイルス選手=8月1日、パリ(共同)
  •  パリ五輪の体操女子個人総合決勝で平均台の演技をするバイルス選手=8月1日、パリ(共同)
  •  人類で初めて月に着陸した米宇宙船アポロ11号の乗組員。左からニール・アームストロング船長、マイケル・コリンズ、バズ・オルドリンの両飛行士。船長とオルドリン飛行士が月に降り立った=1969年7月(NASA、ロイター=共同)
  •  アームストロング船長が月面で撮影したオルドリン飛行士(NASA提供・共同)

 佳境に入ったパリ五輪。選手たちの輝く姿を見ていて、ふと、私たちはどんな物語を目撃しているのだろうと思うことがある。

 それぞれの競技に取り組んでいる人たちの圧倒的多数は、五輪には縁がない。世界の人々の共通経験からすれば、そこで起こっているのは自分たちと関係のないことである。

 出場するだけですごいことなのに、ましてやメダルを取るのは、ほんの一握り。真剣に向き合っても、大半の選手は平凡な成績に終わり、その後の人生を歩んでいく。もちろん、努力して成果を得ることは素晴らしいが、それは私たちみんなの物語ではない。

 高校野球も、甲子園でプレーできるのはごく一部の選手たち。大多数の球児が地方予選で消えていく。だけど、その後にこそ人生は続いていく。そして、どの人生もかけがえのないもので、予選で涙をのんだ経験が甲子園での優勝に比べて意味がないわけではない。

 私たちは、一人一人、それぞれの人生の現場で頑張っている。時にはサボってしまうことも、ベストを尽くせないこともあるかもしれないけれども、どんな人生もその人ならでは、なのだ。喜びもあれば、悲しみもある。人生の日々に、平凡も非凡もない。

 だとしたら、私たち...

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