おそらくほとんどのバレーボールファンは「勝った」と思っただろう。私もそうだった。「あと1点取ればいい。チャンスは3回もある」。そう思っていたら、1点、また1点と失った。52年ぶりの金メダルを目指したバレーボール男子の日本が迎えた準々決勝のイタリア戦。セットカウント2―0で迎えた第3セットの24―21の場面である。ひっくり返されてこのセットを失ったあげく、続く2セットも奪われ、世界の頂を目指す道は閉ざされた。それでも、かつて人気はありながら五輪に出場さえできない時代を知る身にしてみれば、「石川祐希のチーム」の奮闘に感謝したい。(共同通信=三木寛史)
▽目標は金メダル
7月10日、石川は日本チームのパリ五輪での目標を「メダル」から「金メダル」へと上方修正したことを明らかにした。ネーションズリーグ(NL)で強豪を次々と破って準優勝した実績がある。世界ランキングは2位。その心意気やよし、である。最低でもメダルを取れるだろうと思い、ひょっとしたら金メダルもあるか、と期待した。1972年ミュンヘン五輪で頂点を極めた金メダリスト、森田淳悟さんの予想も変わらなかった。名将松平康隆監督指導の下、横田忠...