6投目の逆転アーチで知られる女王が、強烈な先制パンチでライバルたちを黙らせた。陸上女子やり投げで10日、北口榛花が日本女子初のフィールド種目での金メダル獲得した。陸上では2004年アテネ五輪の、マラソンの野口みずきさん、ハンマー投げの室伏広治さん以来の輝きとなった。179センチ、86キロの堂々たる体格。やり投げ王国チェコへ単身で乗り込み、5年余りで夢を実現させた26歳のアスリートに何が起きていたのか。(船原勝英)
2023年は、ブダペストでの世界選手権を初制覇し、最高峰のダイヤモンドリーグ(DL)最終戦にも勝って、名実ともに頂点に立った。しかし、今季は国内外での連勝記録が11でストップ。7月のロンドンでのDLも4位に終わって表彰台を逃し、パリへは記録ランキング5位で乗り込んでいた。
「オリンピックで勝ってこそ真のチャンピオン」と心に決めていた北口は、決勝を前に「いつもはのんびりしていたが、強い選手ばかりなのでプレッシャーをかけようと1投目からいった」。
無風状態のパリの大空へ、角度40度を超える高く大きなアーチが1投目に飛び出した。シーズンベストの65メートル80。これで勝負あった。...