三遊亭楽太郎(後の六代目円楽)に入門してひと月、初めて稽古をつけてもらう。
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1997年5月のある朝のことです。師匠から「落語をやる気があるのか」と聞かれ、大きな声で「はい!」。そのまま稽古に突入です。和室で師匠が浴衣に着替えて座布団に座ります。弟子のワタクシは畳に座ります。忘れもしません、一番初めに「子ほめ」を習いました。
入門時19歳。子どもです。そのワタクシが子どもを褒める落語を教わる。今考えるとおかしいですよね。でも真剣な稽古。目の前で憧れの師匠が自分のためだけに一席やってくださる。おお、これが師弟関係なのか。しかし正座などまともにしたことのない19歳。10分もしないうちに足が…。
師匠が真剣に稽古してくださっているにもかかわらず、だんだん落語が入ってこなくなり、歯を食いしばって足のしびれと戦う。30分ほどで稽古が終わります。まだテープレコーダーを持っていなかったワタクシのために、師匠が録音してくれていました。「次回からは自分でな」
師匠はすっと立ち上がって和室から出ようとする。ワタクシもすぐに追いかけたいのですが、生まれたての子鹿のようになっている。師匠が一言。...