マニラ首都圏のパシッグ川沿いで10年以上暮らし、毎年変化する様子を間近で見てきた。当初は雨期になると川の悪臭が強まり、台風が通過するたびに自宅まで臭いが届いた。強烈な悪臭と廃棄物であふれる川を眺め、やるせない気持ちになったものだ。
しかし、ここ数年はフィリピン政府の再生事業により改善している。政府が進めるパシッグ川の再開発・環境再生事業の第3期では、史跡のサンティアゴ要塞(ようさい)と川沿いの散策路を結ぶ計画だ。またメキシコとフィリピンの友好を記念して名付けられたプラザ・メキシコという広場の再開発や、サンティアゴ要塞の修復を進める。広場の再開発では、2000平方メートルの公共スペースや野外劇場などを整備する予定だ。
パシッグ川は、フィリピン最大の湖であるバエ湖から西に流れマニラ湾に注ぐ。延長距離は27キロと短い。フェリーは市民にとって重要な交通機関になっている。
課題はまだ多いが、生態系は回復に向かっている。今後、ごみの不法投棄の取り締まり強化やスラム街の改善、一般市民を対象とした啓発活動が求められる。近い将来に、透明度の高い澄んだ水を再び眺めることができるだろう。(フィリピン)
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