今年は戦後80年目の節目の年だが、閣議決定による首相の「戦後80年談話」発出は行われない方向のようだ。そのかわりに、というわけではないだろうが、先の大戦を検証する有識者会議を設けると報じられた。
その会議ではおそらく、時の政府の姿勢や軍部との関係、情報収集やその取り扱いの問題などが議論されるのだろう。私はそれに加えて、ぜひ「戦争と心理」についての検証も行ってほしいと考える。
戦争中の記録を読むと、攻め入った地の陥落に際してちょうちん行列が行われるなど、国民も決して全員が戦争を忌避してはいなかったことがわかる。「進め一億火の玉だ」という大政翼賛会が打ち出したスローガンが流行し、戦況が悪化して部隊が全滅しても「玉砕」とたたえるなど、集団で気分が高揚して現実が見えなくなり、いわゆる大本営が発表する情報をうのみにする、という特殊な心理状態にあったことが考えられる。私の亡父は戦時下に少年期をすごしたが、軍隊にあこがれ、食糧不足に陥っても何ひとつ戦争を疑うことはなかった、後から考えるとまったくおかしな話だ、とよく語っていた。
ドイツの政治学者ノエルノイマンは、マスコミなどの情報を多くの人が信じる...