【茂木健一郎のニュース探求】人間とAIの関係を考える契機となった今年のノーベル賞

  •  茂木健一郎さん(撮影・佐藤優樹)
  •  ノーベル物理学賞に決まったジョン・ホップフィールド氏(左)とジェフリー・ヒントン氏=10月8日(ノーベル財団のホームページから)
  •  ノーベル化学賞に決まった(左から)デービッド・ベーカー氏、デミス・ハサビス氏、ジョン・ジャンパー氏=10月9日(ノーベル財団のホームページから)
  •  人工ニューラルネットワークのイメージ
  •  AIによるタンパク質の立体構造予測(イメージ)

 今年のノーベル物理学賞、化学賞はどちらも人工知能(AI)関連の研究に与えられることが決まった。対象となった研究の意味について考えてみたい。

 ノーベル物理学賞が授与されるのは、昨年、(一般に普及し)世界を驚かせた対話型の生成AI「チャットGPT」の背景にある、ディープラーニング(深層学習)の基礎を築いた2人の研究者だ。一方、ノーベル化学賞は、AIによってタンパク質の立体構造を予測した3人の研究者に決定。生命現象の理解や、創薬などに意味を持つ成果であり、そのインパクトは大きい。

 いずれの授賞も、その内容は掛け値なしに素晴らしい。従来の物理学賞、化学賞のイメージとかけ離れた情報関連の研究が対象になった点についてはいろいろな議論があるが、ノーベル賞委員会が時代に即した判断をしたことは、妥当だと言えるだろう。

 これらのAIの研究成果は、さまざまな応用が期待できる偉大なものだ。一方で、その実質を少し深堀りして考えてみると、これからの私たちの生活に及ぼす影響、そして課題の本質が見えてくる。

 チャットGPTのような大規模言語モデルの隆盛を抜きに、今回の物理学賞の授賞はなかっただろう。この分野で大きく...

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