師匠三遊亭楽太郎(後の六代目円楽)の下での前座修業は、かばん持ちから始まった。(9回連載の第4回)
× ×
芸人の師弟関係は「守破離」と言われます。はなし家ですと、前座修業が「守」に当たる。とにかく師匠のまねをしてコピーする。師匠の言う通り行動し、自分を矯正していく。
二つ目が「破」の期間。今まで師匠の通りにやっていたのを、自分なりに少し変えてみる。あんまり変な方向に進んでると師匠から大目玉を食らうので注意しなきゃいけません。「離」は真打ちから先でしょうか。芸って、どうしても師匠そっくりになる。でもコピーはマスターにはかなわない。自分の落語を作っていかなければならない。
前座修業中、特に勉強になったのが気遣い、心遣い。当時は高速道路の料金所にETCなんてありませんでした。師匠の車は左ハンドルだったため、料金を払うのは助手席に座るワタクシの仕事。係の方に千円札を渡してお釣りをもらう。師匠がおかんむりです。
「おまえは口がきけないのか」「すみません」謝るしかない。
「どうして係の方にお疲れさまです、ありがとうございますの一言が出ない」
こうなるとしばらく口をきいてくれない。帰りの高...