【3分間の聴・読・観(33)】子どもと大人の境界をあいまいに

 人間の心に共鳴する映画、児童文学

  •  「Playground/校庭」(C)2021 Dragons Films/Lunanime
  •  「Playground/校庭」(C)2021 Dragons Films/Lunanime
  •  「Playground/校庭」(C)2021 Dragons Films/Lunanime
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 7歳のノラが小学校に入学した日から映画「Playground/校庭」は始まる。ノラは泣いている。3歳年上の兄アベルにしがみついて離れない。初めて家族から離れ、別の世界に足を踏み入れるのが不安だからだ。

 学校は小さな集団かもしれない。でも子どもにとっては自らの存在がかかっている。現代のベルギーの物語を見ながら、似たような気持ちを思い出す人は多いだろう。

 本作が長編デビューとなるローラ・ワンデル監督は7歳の視野でカメラを回した。ノラがその場で注意をひかれている少数の人物にだけ焦点を絞り込む。先生や、求職中で学校に送り迎えする父親ら大人の姿はピントが合っていてもフレームに収まりきらない。

 聞こえてくる子ども同士の会話は遠慮なく相手の弱さを突く。グサグサという音がするかのよう。ノラもその標的となる。校庭で遊ぶ子どもの大きな声も険しく響き、視覚、聴覚とも主人公と一体となって進む。

 物語が一層緊迫するのが兄アベルへのいじめである。何人かに押さえつけられ、便器に顔を突っ込まれる現場をノラは目撃した。だがアベルはエスカレートするのを恐れるのか、誰にも言うなと言い渡す。ノラも自暴自棄になってしまう。あ...

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