【茂木健一郎のニュース探求】生きがい、なごみ、こだわり… 世界が注目する日本発の概念

  •  茂木健一郎さん(撮影・佐藤優樹)
  •  ベストセラーとなったドイツ語版『IKIGAI』=筆者提供
  •  1932年7月、東京・隅田公園広場での数万人によるラジオ体操。朝の公園で今もおなじみの光景だ(日本電報通信社撮影)
  •  東京都文京区の大塚公園にある「文京区ラジオ体操発祥の地」の少年像。<生きがい>が社会的につくられるとの観点で、ラジオ体操は興味深い=2019年10月
  •  ドイツ語版『IKIGAI』を手にする茂木健一郎さん=筆者提供

 私の書いた<生きがい>に関する本が、ドイツでベストセラーになっている。現時点で15週連続のペーパーバック部門1位で、驚くとともに喜びを感じる。

 もともとは2017年に英語で出版した『IKIGAI』のドイツ語版が、なぜか今年になって反響を呼んだ。先日、ドイツ人ジャーナリストが東京に来てインタビューを受けた。その際、ドイツでなぜ<生きがい>がブームになっているのかを“逆取材”した。

 どうやら、ドイツ人が今の自分たちの生き方に不安を抱いていることが背景にあるらしい。環境問題やウクライナでの戦争を通して、将来への希望が持てなくなった。一方で、仕事のストレスもたまっている。明日が見えない中で、日本発の<生きがい>の概念に魅力を感じているようだ。

 私がこの本を書こうと思ったのは、1週間足らずのうちに全く別の場所で、外国の方が「イキガイ」という言葉を口にしているのを偶然聞いたのがきっかけだった。米国の作家による著作の中で、世界の長寿エリアの一つとして日本が挙げられ、その秘訣(ひけつ)が<生きがい>であるとされたこともブームの先駆けになったようである。

 <生きがい>は、日本語では一つの単語だが、英語...

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