大抵の物語は出会いと別れでできているのではないだろうか。「男はつらいよ」で寅さんは全国各地でマドンナと出会い、失恋してまた旅に出る。「ローマの休日」でアン王女は新聞記者のジョーとつかの間の恋に落ちる。恋愛映画に限ったことではない。「七人の侍」にしても寄せ集めの侍たちが共に戦い、ある者は命を散らす。誰かと誰かが出会うことで物語は動き始め、一時的にあるいは永遠に別れることでドラマが生まれる。
スペイン出身のパブロ・ベルヘル監督による長編アニメ「ロボット・ドリームズ」は、1980年代とおぼしき米ニューヨークを舞台に描かれる友情の物語。ただし主人公は人間ではなく、犬とロボット。1匹と1体の出会いと別れは楽しくそして切なく、人生経験を積んだ大人の観客にこそ響くビタースイートな作品となっている。
犬のドッグはニューヨーク・イーストビレッジで1人暮らしをしている。ゲームをするのも一人、食事もレンチンで一人。窓の外に目をやると、隣のアパートでカップルが仲むつまくテレビを見ている。冒頭わずか数分で見せるドッグの暮らしは、都会の孤独を表して出色だ。テニス型のテレビゲームを右手対左手で遊ぶ姿はいかにも寂し...