「東京都知事選の投票率は低いのではないか」という私の予想ははずれた。最終的な投票率は60.62%と、前回の55%を5.62ポイント上回っていたのだ。都民の関心はそれなりに高かったと考えられる。結果は、現職の小池百合子知事の圧勝であった。
私が「投票率が低いのでは」と考えた最大の理由は、立候補者が56人と過去最多になったことだ。ただでさえ有権者の関心は散漫になり、さらにポスター掲示板をジャックする動きがあったり、政見放送でブラウスを脱ぐ女性や手話通訳者を威嚇する男性がいたりしたため、うんざりして“都知事選離れ”を起こす人が増えるのではないか、と考えたのだ。
ところが、現実はそうではなかった。そういった一部の候補者の身勝手とも思える振る舞いがネットニュースなどで連日、報じられることで、多くの人がいやでも都知事選を意識せざるをえなくなった。それが投票率のアップにつながった一因だったとも考えられる。
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