明暗を分けた“危険察知能力”【五輪コラム】

阿部一二三と詩は、今後も日本柔道を引っ張る

 柔道を学ぶ者はだれでも憧れの選手と必殺技がある。たとえば古賀稔彦の背負い投げ、井上康生の内股、女子なら谷亮子のスピード感あふれる闘いなどだ。いま子供たちが思い描く理想の姿は、阿部一二三、詩兄妹の柔道だろう。そろって東京五輪に続く金メダルを目指したパリでの2人は明暗を分ける形となったが、残したインパクトはともに大きい。これからも少年少女のヒーローであることに変わりはない。(共同通信=尾崎透)

 女子52キロ級。妹の詩は2回戦で敗れ、連覇は早々に消えた。番狂わせの谷落とし以上に驚いたのは試合後の姿だ。かつて敗れてこれほど鮮烈な印象を残した選手がいただろうか。少なくとも柔道では見たことがない。

 試合場を降りると、コーチにしがみついてあたりをはばからず号泣。通路に崩れ落ち、泣き叫ぶ声が響き渡ると、会場中から「ウータ! ウータ!」の大合唱が起きた。柔道をよく知るフランスの観客ならではの励ましの声だった。

 男子66キロ級で連続金メダルを手にした一二三が初戦の畳に上がったのは、「信じられなかったし、僕も泣きそうになった」という詩敗戦の衝撃がまだ冷めないころだった。

 闘いぶりには以前はまったくなかった...

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