感涙のお仕事

  •  柳亭小痴楽

 私がこの世の中で一番好きな映画は「男はつらいよ」である。

 そして、一番好きな架空の人物が、車寅次郎である!

 小学生で「男はつらいよ」に出会い、中学3年で寅さんに恋をした。「男はつらいよ」にハマったことを知った父が喜々として近所のビデオ屋さんで一気に全作を借りて来た。それからは、めったに家に寄りつかなった父が毎日必ず夜中には帰って来てくれた。

 父がいつ帰ってくるのかも分からないので、一人で先に見ていると父は「一緒に見るって言っただろ! 抜け駆けするな!」。そう言って怒るものだから、夜遅くまで父の帰宅を待ち、毎日夜中から朝まで寅さんを、夜な夜な1日に2作品ずつくらいを一緒に見ていた。

 おかげでちょうど登校時間に寝始めることになり、中学最後の3学期は始業式と卒業式しか出席できなかったのは、今となってはとても良い思い出である。

 寅さんの不器用で言葉足らずだけど、人情味と愛嬌(あいきょう)のあるキャラクター。そして、一本気で後先を考えず思ったことを思った通りに行動する向こう意気の強さ。周りからしたら心配で、心配でほっとけない愛くるしさで、いつも皆を困らせながらも中心にいる、周りに恵まれた幸せ者...

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